建設・不動産業は、住宅やビル、公共施設など様々な社会インフラの基盤整備を担う重要な産業です。一方、建物の資材調達や設計・施工、運用・改修、解体までのライフサイクル全体で資源・エネルギーの消費、CO₂や建設廃棄物の排出など様々な環境負荷が発生しています。また、就業者の高齢化や人手不足、多重下請構造も課題となっています。ここでは、建設・不動産業の目標となりやすい、あるいは関心の高いSDGs目標を業界動向と併せて解説します。
気候変動対策というと、これまでは、温室効果ガスの排出の抑制などを行う「緩和策」が中心に議論されてきましたが、今後は、異常気象の影響がさらに拡大するのを見越して、これに「適応」するための「適応策」を進めることが重視され始めています。例えば、洪水や暴風による被害を軽減するような建物・構造物の設計・施工や、災害時の避難場所として建物を提供するための自治体との提携などが考えられます。建設・不動産業は、気候変動により激甚化する自然災害への強靭性や適応能力を強化する社会インフラ整備において大きな役割を担っています。
参考URL:気候変動適応計画(気候変動適応情報プラットフォーム)
建物は一度建てられると長期にわたって使用されるため、使用段階のエネルギー消費によるCO₂排出量の比率が高いと言われています。施工段階から使用段階を経て、解体に至るまでの建物のライフサイクル全体を通して、エネルギーの効率的な利用やCO₂排出量の削減が求められます。建物の使用段階におけるCO₂削減の具体的な取り組みとしては、建物外皮の断熱性及び設備機器の効率性等の向上や、再生可能エネルギーの活用等により、エネルギー消費量をネットゼロにするビル(ZEB:Zero Energy Building)や住宅(ZEH:Zero Energy House)等の建設・普及促進等が考えられます。
参考URL:CO₂かんたんチェック(日本建設業連合会)
「働きがいのある人間らしい仕事(ディーセント・ワーク)」という言葉があります。働きがいとは、やりがいのある仕事というだけではなく、十分な賃金を得られる仕事であることも含まれます。ハラスメントや過重労働、強制労働が行われていないことはもちろん、同一労働同一賃金であること、仕事を通じて十分にスキルを積むことができることなども、良好な労働環境を維持していくために必要です。このような取組みを行っている、あるいは目標にしている企業はSDGs目標8を推進しているといえるでしょう。また、建設業は人手不足が深刻な課題になっていることから、生産性の向上や多様な人材の活躍推進も重要です。上述した気候変動による影響としても、夏季の平均気温上昇による建設現場作業者の熱中症等の健康被害を防ぐための屋外作業の機械化等の対策が求められるでしょう。